ことぶきの花
寿町に大輪の花が咲いた。
中区寿町の労働センターにある駐輪場の天井一面に大輪の花が描かれている。ここは冬の寒い時季に近くの住人たちが集まり、焚き火を囲んでいた場所。天井はその焚き火によって一面すすに覆われていたが、特殊なチョークを使って見事な壁画が描かれた。描いたのは神奈川県在住のアーティストの北川 純さん。完成したのは6月末日で制作期間は約1ヶ月程度。
7月5日、壁画の完成を記念して、寿町勤労者福祉協会主催による完成式が行われた。
寿町は日本三大ドヤ街のひとつ。町内には仕事にありつけない日雇い労働者が溢れ、住人の大半は生活保護を受けて生活している。労働センターは寿町の中心であり、住人たちの寄り場となっている。昼間から大勢の住人達がたむろしているのが日常の光景である。ここでの創作活動は困難を極めたことは想像に難しくない。
北川さんは昨年の暮れ、初めてここを訪れた。横浜のイメージから程遠いこの場所に驚いたが、このすすで覆われた真っ黒な天井を見て、何かを描きたいという思いに駆られたそうだ。前述の寿町勤労者福祉協会に申し入れをしたところ、スムーズに話が進み制作へと至った。
描かれているのは「ことぶきの花」。花はレースの模様をアレンジして描いたそうだが、実際の花の実名はわからなかったので、北川さん本人が命名した。
制作中、住人の反応はさまざまだったそうだ。7、8割の住人は支持をしてくれたが、残りの住人からは中傷されることもあった。また、常に上を向いての作業であるため、肉体的な辛さもあったと言う。そんな時、道路を隔てた場所にある保育園児たちの歌声に救われたそうだ。
私は以前、ここ寿町には文化がないと書いた。緑も少なく、花も見かけることは少ない。最もアートの似合わない町だが、アーティストを惹き付ける何かが存在している場所なのかもしれない。
今後、この町にアートが溢れることを期待したい。このように素晴らしいアートは人の心を癒してくれる。
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