ひと昔前、横浜の臨海都心部で人気のホテルと言えば、「ザヨコ」の愛称で知られた「ザ ホテルヨコハマ」であった。山下公園の目の前という立地の良さに加えて、近隣のホテルニューグランドほど敷居が高くないため、若いカップルが比較的気軽に宿泊できるホテルとして人気があった。その「ザヨコ」が2003年に外資系の「ザ ヨコハマ ノボテル」にリブランドされた時には驚いたが、先月の15日に「ホテルモントレー横浜」として再度リブランドされた。
ホテルモントレーは札幌から福岡までチェーン展開を拡げている比較的新しいホテルブランドである。ビジネスホテルではなく、名前通りのヨーロピアンスタイルの外観と女性好みの内装とインテリアで人気のホテルである。
リブランドと言えば聞こえはいいが、営業が上手くいかず運営の委託契約が更新されなかっただけであろう。それにしても今回は余りに早い交代劇であった。これは横浜の観光の在り方が大きく変わってしまったことが伺える出来事と言える。
かつて横浜の観光の中心と言えば、山下公園、元町、中華街であった。観光客はJR根岸線の関内駅或いは石川町駅で下車し、中華街で食事をし、元町でショッピング、そして山下公園を訪れるのが一般的なパターンであった。しかし、みなとみらい21がオープンしてから少しずつ横浜観光のパターンが変わり始め、赤レンガ倉庫、大桟橋のオープンが拍車をかけた。みなとみらい地区が観光の中心となり、観るべきスポットが増えてしまった。食事のために中華街を訪れても、幾度も訪れ少し見飽きてしまった山下公園で過ごす時間を減らし、遊歩道(山下臨港線プロムナード)を使って大桟橋、華やかなイベントが多く開催されている赤レンガ倉庫、みなとみらい地区を足早に目指すようになったのだ。結果、観光客は氷川丸やマリンタワーを観光のルートに加えなくなってしまったのである。この事実はホテルの集客にも影響が出ている。みなとみらい地区の高級ホテルは、平日こそネットで安売りをすることがあっても、休日の稼働率は一定の水準はキープしているはずだ。しかし、観光の中心でなくなった山下公園にある「ザ ヨコハマ ノボテル」は稼働率を維持できなかったのであろう。もしかすると稼働率は維持出来たのかもしれない。過酷な価格競争のなかで安売りを強いられ、収益が落ち込んだことも原因として考えられる。
横浜の観光が多様化しただけではなく、お台場の存在も影響していると言える。観光客はわざわざ横浜まで行かなくとも、お台場のホテルで海に面したお洒落なホテルが十分満喫出きるようになったのだ。
去年、ある民放のテレビ番組で横浜の観光について取り上げていた。地方から観光で横浜を訪れる人は東京観光のついでが多いらしく、日帰りが多いとのことだった。有名なお台場に宿泊すれば地元で自慢できるし、横浜に宿泊する必要もないのかもしれない。
訪れる人は多くとも、ホテルに泊まってまで横浜を満喫しようと考える人が減っているのである。
そんな臨海都心部であるが、最近面白い現象が起きている。バジェットホテルの建設ラッシュである。この件については以前も取り上げたのでこれ以上書かないが、シングルなら6~8千円程度の低料金で宿泊出来るホテルが次々と建設されているのである。
私は以前某ホテルチェーンに勤めていた。横浜には出店しておらず、新横浜、横浜駅西口を出店箇所として狙っていた。ビジネスホテル系のため観光地は対象外なのだが、ある時、開発担当の社員に関内地区への出店の可能性を聞いてみると、需要が低いので出店対象エリアではないと言っていた。しかし、多くのビジネス系のホテルチェーンが出店を始めている。平日はビジネス客、週末は観光客で部屋を埋める考えだろう。客室は狭いだろうが、料金は安く、施設は新しく綺麗である。ある程度の観光客の需要も見込めると思える。今後、一番苦戦を強いられるのは中級クラスのホテルかもしれない。宿泊したことがステータスにはならず、料金もバジェットホテルに比べると割高のこのクラスが一番苦戦すると予想される。「ホテルモントレー横浜」もこのクラスだ。また、同クラスの「JALシティ」が日本大通駅近くに出店を予定している。このクラスのホテルは競争が激化するであろう。
さて、日本は海外からのツーリストがあまり多くはないが、横浜を訪れる外国人ツーリストはどこに宿泊するのであろうか。臨海都心部で出会う外国人はパシフィコ横浜などで行われるコンベンションのために来日した人が多い。故にみなとみらいの外資系ホテルは外国人客の宿泊が多く、フロントクラークの語学力のレベルも高い。また、台湾を始めとするアジアからの団体客は「横浜伊勢佐木町ワシントンホテル」など、比較的安いホテルを多く利用するようだ。「東横イン」などでも時折外国人の姿を見かける。
海外からの観光客ではバックパッカーと呼ばれる人たちも多いが、彼等はホステルと呼ばれる安宿に宿泊する傾向が強い。贅沢をせず、出きるだけ宿泊費を抑えるためである。
しかし、京都などに比べると横浜にはホステルが少ない。このような外国人向けの安宿は桜木町にあるユースホステルとFunnybee株式会社が運営する「YOKOHAMA HOSTEL VILLAGE」だけであろう。「YOKOHAMA HOSTEL VILLAGE」は簡易宿泊施設が多数あるドヤ街の寿町を外国人客を中心としたホステルの街に変えていくプロジェクトである。既存の簡易宿泊施設をゲストハウスにするのは少し無理もあり、運営は苦労も多いと思われるが、最近フロントオフィスを寿町内に新しくオープンした。明るく開放的なオフィスは、暗い雰囲気の寿町の中では少し異質な感じがするが、ツーリストが旅の疲れを癒しホッと出来る場所であろう。外国人ツーリスト向けのインフォメーション機能も充実された。
横浜は魅力ある観光資源が豊富なエリアである。みなとみらいだけでなく、山手の名建築など観るべきところが沢山ある。今後も宿泊施設では熾烈な価格競争が展開されると予想されるが、訪れる人のニーズに合わせたサービスでもてなせばリピーター客は確実に増えるであろう。
国内はもちろんのこと海外からももっと多くの人が横浜を訪れて欲しい。
写真 上から
ホテルモントレー横浜
山下公園よりみなとみらいを望む
おお桟橋よりみなとみらいを望む
建設中のルートイン横浜 馬車道 写真右側はロイネットホテル
YOKOHAMA HOSTEL VILLAGE フロントオフィス
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